「103万円の壁」は2種類ある?
いま話題の「103万円の壁」とは、もともとは所得税がかからない上限金額のことを指しています。しかし、実はこれとは別に、もう1つ「103万円の壁」と呼ばれるものがあります。それが「扶養控除」に関するものです。
この扶養控除に関しても、同じように年間の収入が103万円を超えると影響が出る仕組みで、特に子どもや大学生を扶養に入れている親にとっては大きな意味を持ちます。
特定扶養親族の扶養控除の仕組み
扶養控除は、例えば子どもが16歳以上になったときに適用され、高校生以上の子を持つ親が税制上の控除を受けられる仕組みです。特に、19歳から22歳までの大学生は「特定扶養親族」に分類され、親は所得控除として年間63万円を受けることができます。
ただし、この控除は大学生の年間収入が103万円以下であることが条件でした。たとえば、アルバイトで104万円以上稼ぐと、この63万円の控除がゼロになってしまい、親にとっては実質18万円近く税負担が増える可能性※もありました。(※所得税20%、住民税10%の合計30%とした場合)
そのため、多くの学生が「親に迷惑をかけないために」年末にバイトを控えるなどの行動をとっていたのです。
令和7年からの税制改正と「150万円の壁」
こうした現実に対し、学生からの声が政治に届き、令和7年(2025年)から「特定扶養親族に対する扶養控除」が大幅に見直されました。
これまで103万円だった収入上限が、「150万円」まで引き上げられたのです。これにより、大学生は年間47万円も多く稼げるようになり、親の扶養控除63万円も維持されます。
さらに嬉しいのは、150万円を1円でも超えたからといって、即控除がゼロになるわけではないという点です。150万円~188万円の間は段階的に控除が減っていき、188万円までなら最低3万円の控除が残ります。これにより、学生も安心してバイト収入を増やせるようになりました。
ちなみに、この制度設計は「配偶者特別控除」と同じような仕組みで、一定金額までは満額、そこから先は段階的に減少していくというスタイルです。
所得制限の有無と社会保険の違い
この「特定扶養親族」の新しい制度と「配偶者特別控除」との違いのひとつが、親の所得制限があるかどうかです。配偶者特別控除の場合、扶養している人(夫など)の年収が1000万円を超えると控除は受けられなくなります。
しかし、今回の「特定扶養控除」では、親の所得制限はありません。つまり、どれだけ親が稼いでいても、子どもが条件を満たしていれば控除は受けられます。これは非常に大きなメリットです。
一方で、社会保険についてはまったく別の話になります。特定扶養控除は「親の所得税控除」なので、子ども自身が社会保険に入るかどうかには関係ありません。
学生は基本的に、週20時間以上働いても社会保険の加入義務は免除されています。ただし、年収130万円を超えると親の健康保険の扶養から外れる可能性があるため、注意が必要です。
声を上げれば制度は変えられる
この制度改正の背景には、実際に「もっと働きたい」「不公平だ」という学生たちの声がありました。それを政治が拾い上げ、国民民主党から自民党へと伝わり、税制改正が実現しました。
つまり、国民一人ひとりの声が制度を動かす力を持っているということでもあります。学生や若者たちが社会に声を上げた結果として、より現実に即したルールが生まれたのです。
以上「脱・税理士スガワラくんチャンネル」まとめでした。
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